『顧客大事』を実践することで達成できる

岡三証券グループは1997年以来約17年ぶりにトップ人事を刷新し、4月に新芝宏之社長が就任。創業家以外から初の登板だ。野村ホールディングスなどの大手5社に次ぐ準大手として、どう存在感を出していくのか。就任して3カ月の新芝社長に聞いた。 ―どのような企業像を目指しますか。 「大手5社とは違う独自の存在を目指したい。岡三証券グループは証券会社の売上高に当たる純営業収益の規模では大手5社に次ぐ準大手であり、個人投資家を対象にしたネット証券も持つ。さらに地域密着型の老舗だ。大手に次ぐリーダー的な存在であり、企業体としての個性を失わない独自の存在を目指す」 ―安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」で投資家のマインドが大きく変化してきました。重点的に取り組む部門は。 「アベノミクスでバブル崩壊後から続いてきた縮み指向の経済が変わろうとしている。これからの成長産業である個人向け営業部門に力を入れていく。今はデフレから脱却し、緩やかなインフレの時代に移ろうとしており、これまでのように現預金での資産形成は難しい。アベノミクスで投資経験者、投資未経験の若年層の意識が大きく変わってきた。顧客、地域に密着することでチャンスを取り込みたい」 ―地域密着とは具体的にどういうことですか。 「当社は津市が発祥であり、同県内の営業所は13店舗で株式売買のシェアは圧倒的だ。今の個人向け営業部門の特徴は地域での地域支配性であり、長期間、その地域に密着して営業することで差が出てくる。子会社の『岡三にいがた証券』では新潟県出身者の社員が多く、地域内でのシェアは高い。一方、地場証券との違いは商品力と情報力だ。地域密着型営業が得意な地場証券とゆるやかな連合を組むことでお互いに不足している部分を補う。現在、11社と緩やかな提携を結んでいる」 ―17年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画で連結純資産2000億円、連結株主資本利益率(ROE)10%を掲げています。 「投資アドバイスのプロフェッショナルとして『顧客大事』を実践することで達成できるはずだ。また、100周年になる23年には100万口座、預かり資産10兆円も必ず達成したい」  しんしば・ひろゆき 81年(昭56)早大商卒、同年岡三証券(現岡三証券グループ)入社。90年ハーバード大ケネディ行政大学院行政学修士課程修了、01年取締役、04年常務、06年専務。東京都出身、56歳。  【記者の目/規模と地域密着、バランスが重要】 新芝社長は「規模で勝負する中央主権的な面と、地域・顧客に密着する地方分権的な面のバランスが重要。両方できるギリギリが当社だ」と自己評価する。 今は地場証券11社と「ゆるやかな連合」を組んでいるが、環境変化でいずれ“揺るぎない連合”に移行する可能性もある。その独創性に期待したい。(千田恒弥) 【しばし羽休める】 第2四半期(4―6月期)が終わり、ウクライナやイラクの危機など緊迫する国際情勢が続くなか、この1カ月でグローバル投資資金は安全資産の日本円に流入している。ちょうど渡り鳥が、嵐の危険を避けて安全な島に着陸し、しばしの間、羽を休めるようなものだ。円は対米ドルではそれほど大きく動いてはいないが、対ユーロでは円高傾向にある。円は短期的なリスク回避手段として、重宝がられている。 加えて、テクニカルな要因として、円ショート・日本株ロングポジションを取って来た外国人投資家が、この5月には日本株を売り超し、円ショート解消のために円を買い戻した。外国人投資家は、第1四半期(1―3月期)に大幅に日本株を売り越し、4月には買い越した後、5月に売り超した。6月には日銀の追加緩和政策の期待が遠のいたことで円のショート・ポジションをやや調整したとみられる。 また、高い利回りを求めてロシア株に流入した投資資金も、今後のウクライナ情勢の見通しからリスク回避に転じて、ロシアから流出している。イラク情勢が長期化・深刻化することから、グローバルマネーは安全資産の円と米国債へ向かうと見られる。そのため、目先、高利回り通貨の南ア・ランドやトルコ・リラ、インド・ルピーなどに対して円は強くなる傾向がある。 【思惑はまちまち】 このように危機に素早く反応し、世界を動き回るグローバルマネーの動向とは別に、各国中央銀行の金融政策の思惑はまちまちのように見える。例えば、米国中央銀行(FRB)とイングランド銀行は緩和から引締めに転じているが、日銀と欧州中央銀行(ECB)は量的緩和を維持している。 バブル生成と破たんを繰り返すマーケット・サイクルの観点からみると、バブル破たんの処理のたびに、各国政府は財政刺激を、中央銀行は金融緩和を繰り返してきた。先進国では財政赤字が増え、超低金利と量的緩和でデフレ懸念よりもインフレ懸念が頭をもたげている。それでも、政府は、国民に不人気の財政引締めを実行しにくい。中央銀行も低金利に慣れてしまい、なかなか正常な金利に戻せないでいる。そうなると、バブル破たん後の一時的な景気浮上策が慢性化して長引き、正常化が先延ばしされていく。いつになったら景気が好転したと判断できるのか、「出口」がどこにあるのか、政府当局にとって判断しづらくなっている。 【成長モデル一巡】 さらに、日米欧の先進国は共通の課題に直面する。高齢化する人口とともに減り続ける国民の貯蓄である。貯蓄がなければ投資は活性化しない。米国のように移民を受け入れ、彼らにアメリカンドリームを実現させるために住宅や教育などあらゆるローンで前貸しして個人消費を喚起するようなレバレッジの高い成長モデルは既に一巡している。(金曜日に掲載) ◇国際金融アナリスト兼SAIL社長・大井幸子氏

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